兎の狂い唄

死んだのか生きているのか

それすらわからない曖昧すぎるこの現実味にいい加減飽きてきた。
周りの者からは″三月兎″と呼ばれて…

初めて白の女王様からはメイヤーと呼ばれたけどすぐに名前が消えた。
皆は気にする事ないっていうけど、俺はすごく気にした。
自分の価値観ってヤツがよくわからなくて……



実はこの世界にいる俺は元々選ばれたアリスだった。
といっても男のアリスだなんて、気味が悪いもんだ。
帽子屋とは外の世界…此処、不思議の国(ワンダーランド)以外でも会った事ある
だけど、本人は知らないっていう…

赤髪を左右に投げ飛ばしたように伸ばしきって黒目に派手な値札のついたシルクハットをかぶってたスーツの男…
当時の俺も此処にきた俺も何一つ変わらなかった。
茶髪を伸ばして釣り目にチョッキを着た俺…
耳飾りにわらで編んだ兎の耳をつけていた。

「よくお似合いで」

それを見られると度々そういわれて俺は恥らったりしていた。
何にも恥らう事ないのに手作りを褒められたら恥ずかしいんだっ

だけど、………

だけど、アリスの扱い方は俺との態度とは凄く変わっていて
優しくて穏やかで…とてもうらやましかった。



″この世界に来た者は一定の確率で住民と化す
 なった者は皆、人の頃の記憶を失う″



それに抗い無事帰ったのはアリスだけだった…―――
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