あなたの”その”足元へ
1.出会い

貴生(たかお)を失った夜に、蕾奈(ライナ)は男の子を拾った。

置いてきぼりにされた子。

同じように。
      


   *
 -10年後


「ただいま」


ライナがリビングに入ると涼とその友だちが振り返った。


「おじゃましてまーす」

「いらっしゃい。
 夕食は?」

「まだ」


涼は立ち上がった。


「ピザ頼もうか」


ハンドバックをソファ-において電話を手にした。


「おまえの姉さんってびっじ-んだな」

「まあね」


涼はそっけなく言うと床に座り込んだ。


「今度俺の番じゃないの」


友達からゲーム機を取り上げた。


「涼」


隣の部屋からライナが呼ぶ声がした。


「ん!」


友達に押しつけて、部屋に入った。


「今から出掛けるから」

「また?」

「そう、嫌な顔をしない」


涼はむすっとして横をむいた。


「いい子でね」


頬に素早くキスするとライナは軽く手を降って出ていった。


「いい子でね、か」


涼は呟いて、じっと窓の外を見つめていた。
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