あなたの”その”足元へ
ライナとの会話を頭の隅に追いやって、涼は客の流れを確認しようと、予約台帳をめくった。

バイト先のレストランは今日も満席だ。

客の注文をとるために、ホールに戻る。

新たに来た客を、先輩ウェイターが案内をしてきた。

黒髪のイタリア系の外国人男性。

涼は思わず手を止めた。

その後ろを歩いてくるのは、綺樹だ。

リトルブラックドレスを着て、化粧もしている。

涼に気付いたらしく、綺樹はにやりと言う感じに笑った。

今の姿では、その笑いもコケティッシュだった。

テーブルに座る二人は、外国人カップルらしい振る舞いだった。

見つめあい、お互いの体に事あれば触れ合っている。

周囲がちらちらと二人を見るのは、その振る舞いのせいだけじゃないだろう。

絵になる男女だ。

ふ~ん、あれが彼氏か。

涼はグラスを拭くナプキンを、ばさりとテーブルに置いた。

外見は整っているが軽そうだ。

ああいうのが好みなのか。
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