あなたの”その”足元へ
またテレビに向かって仁王立ちになっている、背中を見る。

両手をパンツのポケットに突っ込んでいる

どこに行くのかは、聞けなかった。

聞くような関係じゃない。

様子からは仕事らしいが。

ニュースが終わったのに、綺樹は窓によると眼下を見下ろした。

涼は彼女の雰囲気が変わるのに、気が付いた。

振り返る。

全くの無表情だった。

仮面のようだと言っていい。

綺樹の周りの空気は渦巻くようだった。

吸い寄せられて、足元に叩きつけられる。

気が付いたら、綺樹は部屋を出て行っていた。

息と共に体の力を抜く。

手に負えない。

ライナの言った意味は、このことなのだろうか。

涼は胸が痛むような感触に、ため息をついた。
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