あなたの”その”足元へ
「後はおれ、やりますので」


そっけなく、だけどきっぱりと目を見て告げた。

男と一瞬見つめあう形になる。

穏やかな顔をしていたが、目は彼の本質を表していた。

涼は悟った。

この男は危険だ。

仕立てのいいスーツを着て、ネクタイなどの小物も品がいい。

出来るビジネスマンで、綺樹の同僚かと思ったが、違う。

どうする。

次の手を考える前に、男は微笑した。


「じゃあ、よろしく。
 綺樹、帰るから」


綺樹は涼の胸に頭突きをするような形で抱かれたまま、片手を上げた。


「ありがと」


ろれつは鈍いが、意識はあるらしい。


「助かった」


綺樹の感謝に、男の顔が曇るような、落ち込む表情になった。
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