あなたの”その”足元へ
綺樹が手にしているボトルの不安定さが怖くて涼は取り上げた。


「達馬が抱いている母への恩義を」

「そう?
 頼られて嬉しかったみたいに見えたけど」


意味はよく分からなかったが、綺樹の表情に思わずフォローを入れた。

ゆっくりと視線が向けられる。

そういう焦点の合わない目で見つめられると、困る。


「ありがと」


そうやって笑うのも。


「濡れタオルとってくる」


涼は棚から新しいタオルをとると、お湯で濡らす。

全く、こっちは思春期真っ只中なんだぞ。

それを昨晩といい、今夜といい。

腹がたってしょうがない。

戻ると、綺樹は床に突っ伏して寝ていた。
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