あなたの”その”足元へ
「本当に、やっちゃうぞ」


足で軽く蹴ってから、何の反応もないのに、顔と手を拭いてやる。

また腕の下に肩を入れて起こすと、ベッド代わりに使っているソファーへと、運ぼうとした。

さっき綺樹が浮かべた自嘲が目の前にちらつく。

気が変わって、自分のベッドに運ぶ。


「今夜だけベッド貸してやる。
 吐くなよ」


予想通り全く返答がないのに、傍らの机に水と二日酔いの薬を置く。

上掛けを肩までかけて、手が止まってしまった。

眠りについた顔は、可愛らしかった。

頬の線は柔らかく、小さめな鼻は鼻筋が通っている。

閉じられたまつげは長くて、ややカールしていた。

赤い下くちびるはふっくらして、つややかだ。

指が白い頬をすべり、添える。

思っていた通り滑らかだ。

そのまま更に身をかがめて、くちびるを合わせた。
< 33 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop