あなたの”その”足元へ
ライナは数秒黙った。


「ありがとう」


綺樹は可笑しくなって少し笑い声をたてた。

それが頭に響いて、顔をしかめる。


「これからじゃないの」

「そうね」


ライナも苦笑したらしかった。

ライナとの電話を切ると、もう一本かける。

昨日と同じ車が、またマンションの前にやってきた。

今日連れて行かれる場所は違う。

木造の大きな門を、車は通り抜けた。

左右に、良く手入れのされた日本庭園が広がる。

こんなものを守るために、母は命を削ったのか。

綺樹は冷めた目で眺めていた。

車が止まり、ドアが開けられたのに綺樹は降りると、通常の2倍の長さはありそうな引き戸をくぐった。

玄関の上がり口は20畳を越す畳敷きだ。

そこに男たちが平伏していた。
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