あなたの”その”足元へ
隣の席の同級生が冷やかしたが、涼に無表情にじっと見つめられたのに、慌てて否定した。

涼は視線を外す。


「ああ・・なんだ、そっか」


呟いた。


「えぇ、そうなの。
 誰!」


急に色めきだった同級生を無視して、カバンを肩に担いで席を立った。


「俺、帰るわ。
 部活休む。
 世話を焼く、じゃなくって、看病しなくちゃいけないって、先輩にいっといて」


そう言って家に帰ってきたのに、誰もいなかった。

あんなに飲んだのに出かけたのか。

せっかく、帰ってきたというのに。

自分の部屋に入ると、布団は簡単に畳まれていた。

ペットボトルと薬は、置きぱなしなままだ。

涼は着替えると、それを片付けて、自分の夕食の支度にかかった。

ライナは出張とか言っていた。

綺樹は帰ってくるのか分からない。

また“ひっかけ”に行ったのかも知れない。

自分の気持ちを自覚してしまった今、このイライラが何なのか、よくわかっている。

全く勝手で独りよがりな感情だ。
< 41 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop