あなたの”その”足元へ
綺樹はそっとそこから離れた。

本当は、昨晩の礼を言いたかったんだけどな。

涼の態度に、続けられなくなってしまった。


「嫌われたかな」


綺樹は呟いた。

昨晩の自分の行動を考えると、当然だ。

目の前で吐いた上に、後始末もさせ、寝床も奪った。

別に嫌われる男が一人増えたって、今更だ。

綺樹はソファーに横になった。

疲れが一気に体を支配する。

二日酔いの上に、達馬の母である叔母の相手をし、食べたくない昼食を食べたせいか、気持ち悪い。

叔母の祥子は、血のつながらない母を姉と慕い、尊敬していた。

命を救うには、力が足りなかったが。

だから顔の同じ娘を、とにかく気遣ってくれる。

ありがたいけれど、疲れる。

目を閉じると意識が遠ざかる。
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