あなたの”その”足元へ
綺樹は苦い顔をした。


「わかってるくせに」

「そう?」


さやかは微笑して指図をすると段ボール箱が床に積まれた。

綺樹にはノートパソコンが押し付けられる。


「じゃあ、よろしくね」

「はいはい」


綺樹は追い払うように手を振った。


「で、なんでわざわざお出ましだったの?
 なにが目的だったの?」


さやかの背中に意地悪く聞いた。

さやかが肩越しに振り返って微笑した。

視線をするりと、後の玄関のたたきにいる涼に滑らせる。

綺樹は思いっきり嫌な顔をした。


「そんなことだろうと思ったよ」


その顔にたいして、艶やかに笑い返して行ってしまった。


「やれやれやれ」


綺樹は長いため息をついた。


「涼、頼んでいい?」

「なに?」

「これ、運んで」


段ボール箱の山を指して、自分自身はさっさとリビングに引き上げていった。


「ああ、もう、畜生だ」


ぶつぶついいながらパソコンを起動している。
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