あなたの”その”足元へ
何のことかと思ったら、さっき校門にいた女の姿があった。


「どうも」


口の中で答えた。

だけど、視線の種類が違うと思う。

言うなれば、柵の中の動物を見ているような感じ。

自分を含めた部員たちと、見学している女の子たちを、観察している感じがした。

気が散る。

もの凄く気になってしょうがない。

今日何度目かのミスをして、涼は両膝に手を突いて上体を屈めた。


「どうした涼。
 調子わりーなー」


涼はうなってから、振り払うように勢い良く体を起した。

気合を入れなおして、グランドを駆けだしながら、彼女のいた方に視線を走らせた。

いない。

安堵に肩の力が抜ける。

なんだか、得体の知れない不安を感じさせる女だった。

涼は息をするのを忘れていたかのように、細く長く吐いた。
< 5 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop