あなたの”その”足元へ
「熱っぽそうだぞ」
「そう?」
「飯は?」
「うん」
「うんって」
ダイニングテーブルに用意しておいた朝食に、手を付けた様子はなかった。
ならば、昼食にと思って作ってやった冷蔵庫のおにぎりもそのままだろう。
「おまえ、くえよな。
折角作ってやったのに。
なにか食べたいもんがあるなら、言えよ」
腹が立つよりも、あきれてしまった。
「うん。
食欲ない」
あまりにあっさりと返されて、今度こそ頭にきた。
勝手に作ったのはこっちだが、それでもここまで袖にされると腹が立つ。
「悪かったな。
押し付けて」
女々しいと思いながら、不機嫌な口調で言ってしまった。
綺樹の視線を感じる。
涼は羞恥心で気付かぬ振りをした。
「涼」
涼は丁度鳴った電話を取ることで、返事をすることを避けた。
「はい、もしもし。
は?
います」
涼は受話器を綺樹に向って差し出した。
「警視庁だってよ」