あなたの”その”足元へ
綺樹はふっと顔の表情をひきしめて、立ち上がった。

ゆっくりと受け取る。


「代わりました」


涼は話の内容を聞いてはいけないような気がして、洗濯物を取り入れるべく、ベランダに出た。

洗濯物を抱えて部屋に入ると、綺樹は電話を終えていた。


「涼、ちょっと警視庁いってくる」

「え?
 警視庁って。
 ちょっと、待てよ」


既に、玄関を出て行こうとしている綺樹の後ろを、追いかける。

乗り込もうとしていた、エレベータで追いついた。


「なんだよ警視庁って」

「一緒に来なくていい」


さらりと言われて、言葉に一瞬詰まる。


「そう言われたって、ほうっておけるかよ」


綺樹は首を少し傾げて、不思議そうな目で見つめた。

涼が思わず見つめ返すと、綺樹はぱっと顔の向きを変えた。
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