あなたの”その”足元へ
思わぬ言葉に涼はしばし言葉を失った。


「まさか。
 そんなことないだろ。
 両親にとっては生きていてくれるだけで、うれしいんじゃないか」


綺樹は足を止めて、しばらく押し黙って前方を見つめている。

紙が立てる音に、涼は視線を落とした。

綺樹も、自分が握り締めている紙に視線を落とす。


「そうだな。
 ありがとう」


悪戯っぽい笑顔を向けると、再び歩きだした。

その後ろ姿を、涼はしばらく、そのままで見つめていた。

彼女は何を言い迷ったのか。

照明で、髪が触りたくなるように、柔らかく光っている。

その下には、頼りなさそうな華奢な首筋。
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