あなたの”その”足元へ
   *
玄関モニターに出たライナに命じられて、玄関のドアを開けると、昼間のおもしろくない女が立っていた。

これはハーフっていうのだろうか。

間近にその顔を見て、造りに感心して見つめた。

涼の無言のままの凝視に、彼女は少し困ったように前髪をかきあげて、唇の両端を持ち上げた。


「今晩は。
 ライナは?」


落ち着いたアルトの声で、日本人の日本語をしゃべったのに、涼は我に返った。


「ラナさん?
 えーと、どちらさま?」

「ああ、失礼」


彼女はさっと手を差し伸べた。


「市川 綺樹(あやな)と申します。
 よろしく」


涼は戸惑い気味に、差し出された手を見つめたまま握り返した。

同世代の男子より、女子に慣れている自負はある。

それでも綺樹の雰囲気には、気後れを感じる。

涼の手を握ったまま、すうっと伸び上がる。

気付いたら一瞬だけ、くちびるが合っていた。

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