あなたの”その”足元へ
「なんだか、言われたくない台詞だ」
おかしそうに涼を見上げる。
「そうか?」
「すっごく軟弱な男みたいじゃないか」
綺樹はくくくと声をたてて笑った。
「さて、まあ、目的はわかっている。
少し様子見だな」」
「慣れているんだな」
当然だが、誘拐など初めての経験だ。
ライナは出張中だから、二人の不在に気付き、不審に思うのは2日後ぐらいか。
焦りを感じるが、綺樹の落ち着いた様子に、男の自分が動揺するのは見苦しい。
「まあ、アメリカにいればね」
綺樹はたいしたことの無いように答えると、座り込んだ。
壁に寄りかかり、息を吐いた。
涼は隣に座り込んだ。
「膝を貸す。
横になれよ」
「ん」
素直に身をずらすと、綺樹は頭を乗せた。
ふうっとため息をついて目を閉じた。