あなたの”その”足元へ
「動けなくて・・よかったよ。
立ち向かわれていたら、私は・・口を割っていたから」
涼の微妙な表情に、綺樹は少し可笑しそうな顔をして、目を閉じた。
意識を失うような眠り方だった。
膝から感じられる熱さは増している。
飲みたがっていた水も飲ませられなかった。
「ごめんな。
ほんと、ごめん」
涼は呟いた。
力が無い、ということ。
腕力、交渉力、権力、あらゆる力。
そのことについて、痛切に体に刻み込まれる。
涼は奥歯を噛み締めた。