あなたの”その”足元へ
   *
辺りが騒めいているのに、綺樹は目を覚ました。

目蓋を上げたはずなのに、真っ暗なままだ。


「停電?」

「みたいだ。
 なんだか、外が騒がしくなって」

「ドア側に身をひそめよう」


目が慣れてきた綺樹は、身を起そうとした。

ふらつくのを涼が手を添える。

綺樹は涼の腕をつかんで歩きだした。

ノブの位置を確認する。


「おまえはこっちにいて」


綺樹はドアの開くほうの壁に、身をぴったりとつけた。


「おまえがこっちだろ」

「しっ
 こういう時は性差じゃない。
 経験差だ」


小さく鋭く告げた。
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