あなたの”その”足元へ
挨拶とか、かすったとか、そういうのじゃない。


「ごちそうさま」


そのとおりで、味あわれた。

少し離れただけで言うものだから、彼女の息をくちびるに感じて、背筋に電流が走る。

条件反射的に握っていた手に力を入れて、今度は自分からキスをしかけていた。


「っと、綺樹。
 人の子供であそばないで」


ライナの声にはっとする。

涼は熱いものを触ったように、綺樹の手を振り払った。


「ハイ、ライナ。
 土産。  
 ミネラルウォーターと氷ある?」


スコッチのビンを持ち上げて振って見せた。


「氷がないわ。
 涼。
 お願い」


「じゃ、よろしく」


綺樹はウィンクすると、涼の横をすり抜ける。

暴れる心臓を押さえ込み、涼は財布を引っつかむと、逃れるように家を出ていった。

ライナはそれを横目で見て、ちょっと眉を潜ませた。

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