あなたの”その”足元へ
   *
綺樹は目蓋の上に、影が出来たのに目を開けた。

覗き込んでいる顔がある。


「よう」


2日という時の流れに、少し涼が気後れした顔をしている。

しばらくぼおっと涼の顔を眺めていたが、口元で微笑をつくって、上体を起こした。


「どうしたの?」

「お見舞い」


涼はケーキの箱を綺樹の膝の上に置いた。


「食欲は戻っているんだろ?」

「サンクス」


綺樹はリボンを解き、包装紙を剥いでいく。


「涼」

「ん?」

「今日の夕方から、パリに行かなくてはいけなくて。
 で、もしかしたらライナに頼まれていることも、その場で終わらせてしまうかもしれない。
 そうしたら、日本には戻らないで、そのままアメリカに帰ることになる。
 だから、もうひとつの仕事もここで片付けておきたい」
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