あなたの”その”足元へ
「ラナさんから頼まれていること?
休暇でうちにいたんじゃないのかよ」
綺樹は涼の質問を無視して、ケーキ箱の上に手を置いたまま見上げた。
「涼。
おまえ、身内がいたらどうする?」
さっと無表情になった涼の顔を見つめた。
「おまえの母親は父親と駈け落ちした。
母親は出産で死亡。
その後、おまえの面倒を見切れずに、置き逃げした父親も数年前に病気で死んでいる」
綺樹は、脇にあるナイトテーブルの引き出しから、紙を取り出した。
涼にも見覚えがある。
警視庁に行った時に、綺樹が手にしていた物だ。
「父親の死亡診断書だ」