あなたの”その”足元へ
手に取らず、瞬きもしない涼の瞳に、綺樹は顔を背けた。


「おまえの母親の家が探している。
 後継ぎがいなくて」

「おれの家族はラナさんだけだ」


即答は頑なな声だった。


「ああ」


疲れを覚えて綺樹はめまいに手を顔にやった。


「本当の家族にするのだったら?
 その家だったら、ライナと釣り合いがとれるぞ。
 すぎるってのもある。
 平安時代までさかのぼれる、名家だ」


綺樹はペンを取ると、涼が受け取らない紙の裏に走り書きをした。


「おまえの祖父はとても後悔をしていた。
 一人娘を溺愛するあまり、おまえの父親との結婚は幸せになれないと思い、強行に反対したことを。
 認めて、父親にそれなりの地位を与えていれば、あんなに早く死ぬことはなかっただろうと。
 自分がもっと早くに駆け落ちを許して行方を追っていれば、おまえの行方がわからなくなることもなかったのにと」
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