あなたの”その”足元へ
10.涼の選択
   *
「なに、したんだ?」


道路を渡り、砂浜に下りて先に歩く綺樹の背に、声をかけた。

綺樹は歩みを止めて、しばらく正面の海を見つめていた。


「ライナが」


涼が更に促そうとしたとき、綺樹が言葉を発した。


「おまえと同じくらいの時。
 愛していた男がいた。
 殺されたんだ会社というものに。
 ライナの家の会社と相手の男の家の会社に。
 そして復讐を決心した」


抑揚のないしゃべりだった。


「そして、それが叶った」


海の彼方を見つめている横顔を、風がなぶっている。

白い肌と淡い瞳と、ミルクティー色の髪の毛。

その顔にもの凄く、心がかき乱される。


「復讐すること。
 それがずっとライナの支えだった。
 何年も周到に計画を練り上げた。
 悪くない計画だったから、手助けした」
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