あなたの”その”足元へ
「でも、いつから水割り派に?
 生のままで飲むのが好きじゃなかった?」


理由がわかっているライナは、からかうように聞いた。


「胃の調子が悪くって」


綺樹は真面目に答えて、ソファーに座ると煙草をくわえた。

それから思い出したように、ライナを見上げる。


「ライナ、煙草やめたんだっけ?」

「そう」


綺樹は火を付けずに煙草を捨てた。


「ありがとう」


ライナがにっこり笑うのに、肩をすくめた。

綺樹はソファーの背に寄り掛かり、頬杖をついて窓の外を眺めた。


「涼が戻ってくる。
 いい子じゃない?
 これ、終わったら、あいつにすれば?」

「子、ね」


綺樹は意味をはかるために、ライナの瞳を見た。

ライナは壁に寄り掛かり、腕を組んだままだった。


「いい子よ」


二人はじっと視線を合わせていた。


「だから、あなたみたいな女に、ひっかからないか心配なのよ」
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