泣き顔の白猫
「加原。お前、最近ずっと『りんご』だって聞いたけど」
「……本田係長」
「わかってる、な」
目を合わさないまま、呟くように言う。
豪胆で勢いがあって、全てを任せたくなるような頼れる上司、という感じの人ではない。
どちらかというと捜査員の意志を尊重する方で影も薄いが、その分よく個人を見ている。
加原が『りんご』に通っている理由も、安本が襲撃されたと聞いて比較的驚かなかったことも、全部見透かされているような気がした。
「係長」
加原は、静かに口を開いた。
「平河名波と、接触します」
「絶対に、なにか掴んでこられるんだな?」
息を吸って、深く吐く。
そして、言った。
「はい」