泣き顔の白猫
「……でも、本当のことだし」
拗ねている子供みたいだ、と自分でも思う。
けれど実際には名波の拗ね方は端からわかりにくいようで、母親が扱いに困って呆れた溜め息を吐くのを、何度も見たことがある。
きっと本当は、そこで手放さないで、構ってほしかったのだ。
でも、正直にそう言って『甘えたねぇ』と苦笑いされるのも、あの頃は嫌で。
今なら、あの笑顔が見られるなら、なんだってするのに。
そう思ったら、口をついて出たのは、天の邪鬼すぎる言葉だった。
「マスター、は」
「……人を、殺したいと思ったこと、ありますか」