泣き顔の白猫


「鈴木くんや畑野くんたちとよく一緒にいた、丸井くんという子がね……三年前に、自殺してしまったんです」
「自殺、ですか?」
「えぇ。遺書の類いはなかったんですが、畑野くんの事件があってから、ずいぶん気落ちしていて。決まっていた進学もやめて、就職もせずに……ショックが大きかったんでしょうね」

校長が示した写真は、卒業式の直後と思わしき一枚だった。

いつも中心にいた畑野少年のいない、五人の写真。

本当ならば卒業証書を持って弾けるような笑顔で六人写っていたはずのそれは、無理矢理に作ったような笑顔と、とってつけたようなピースサインが、物悲しいものだった。

その中で特にやつれたように見えるのが、丸井という生徒なのだろう。
彼はポーズも作らず、笑いもせずに、今にも呑まれそうな暗い影を背負っているように見えた。

ここに写っている人物は、今はもう、誰も生きていない。

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