泣き顔の白猫

殺された畑野優馬が女子生徒とほぼ同時期から付き合っていたという、松前佳奈子(まつまえかなこ)というクラスメイトの連絡先を聞いて、二人は帰ることにした。

鈴木学ら畑野少年の友人たちとも、仲が良かったらしい。

卒業写真に写る彼女は、ばっちり決めた笑顔とポーズで、女友達と数人で写っている。
彼氏が殺されたたった数ヵ月後にこんな笑顔ができるもんかね、という呟きを、安本がすんでのところで呑み込んだのがわかった。

安本は、すぐにでもアポ取ってくる、と言って、廊下に出ていった。
手持ちぶさたになったのか校長は、机に並んだ写真を弄りながら、口を開く。

「そういえば、少し前……一月半くらいですか。五年前の事件のことを聞きに、電話してきた人がいましてね」
「え? それ、本当ですか」
「えぇ、男か女かもわからないような、くぐもった声だったんですが……」

それが本当なら、今回の連続殺人と何らかの関係がある可能性が高い。
電話があったのが一ヶ月半前、事件が発生する直前なんて、偶然とはとても考えられない。

思わぬところで思わぬほどなんの気なしに、思わぬ手がかりを得た。

校長は、電話の内容では特に話せることもないので大した情報ではないと思っているようだが、五年前の事件との関連性が見えただけでも、ずいぶん捜査の方針も変わってくる。


戻ってきた安本が、「明後日、話を聞きに行く」と言った。
これで松前佳奈子の近辺でも『一ヶ月半前』というキーワードが出てくれば、二つの事件は関係していると考えて間違いないだろう。

あとは、彼女がどれくらいの情報を握っているかだ。

< 70 / 153 >

この作品をシェア

pagetop