泣き顔の白猫
名波は、待ち合わせの駅前にいた。
加原を待っているわけではない。
いや、待っていても加原は来ないと知っている、というのが正しい。
時刻はそろそろ二時、約束の時間から、もう二時間も遅れていた。
来ないとわかっているのに、なぜかベンチから立ち上がる気になれない。
その理由は加原からのメールにあるということも、名波はわかっていた。
今は会いたくない。
それなのにこの場所から動けない自分が、浅ましい、とさえ思う。