泣き顔の白猫

校門の手前に、バス停。
クリーム色の校舎。
体育館裏へ続く、駐輪場。
衣替え直前のこの時期は少し暑苦しく見える、紺色の制服を来た集団。


車酔いに似た目眩がした。
その校門を通って中へ入る、見慣れない――いや、見慣れない格好をした、見慣れた後ろ姿が見えたからだった。

バスが停まる。
思わず身を縮める。

四十がらみの男と一緒に館町市立商業高等学校に入っていくのは、間違いなく、加原だったのだ。


どうしてそこに。
どうしてそこに。
どうしてそこに。

名波の頭の中は、そればかりがぐるぐるとループし続けている。


加原が、バス停の方をちらりと見る。
心臓が停まるような錯覚を覚えて、身を竦めた。

いつも『りんご』に来る時よりも、いくぶんラフな服装。
見慣れないノーネクタイとジーンズ姿、下ろした前髪。

名波との約束のための格好だと気付く。
その隣に並びたいと、それが叶わないと痛感してから、思った。

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