泣き顔の白猫
バスが走り出す。
加原が刑事だと聞いた瞬間から、新聞で連続不審死の記事を見た時から、いつか知られてしまうという覚悟はしていたはずだった。
なのにいざその危険を前にして、名波は、泣きそうだった。
バスから降りてすぐに、携帯電話を開いた。
新着メールが二件と、留守番電話が一件。
時間通りにいけないという謝罪と、終わったらすぐに向かうというメッセージを、留守電で聞く。
考えてみれば、それが初めて聴く電話越しの加原の声だった。
電話が苦手なのか緊張なのか、普段の饒舌さなんてすっかり影を潜めて、少し固い声。
真面目な口調。
鼻の奥が痛くて、名波は浅く息を吸う。
そして開いたメールを見て、へなへなと停留所のベンチに腰を降ろしてしまった。