遠い記憶


『…れい。美鈴。』


…ここは?
真っ白な世界。
私を呼ぶ声だけが聞こえる。


懐かしい、私の大好きな少しだけ低い声。


「…なお…や?」


声のする方を見やると、そこには直哉が佇んでいた。


『美鈴、久しぶり。』


「…直哉!」


紛れもなく、私の大好きな直哉だった。
私は直哉に駆け寄ると、そのまま抱きついた。


『…ごめんな、美鈴。
お前を1人残して、死んだりして』


なんで直哉が謝るのか。
悪いのは直哉を殺した犯人。


「…直哉、本物…?」


本物と思えるほど、直哉は温かく、そして穏やかだった。


思わずそう呟くと直哉は静かに首を横に振った。


『これは夢。
俺は美鈴に伝えたいことがあって、美鈴の夢にやってきた。』


“伝えたいこと”
直哉はそう言った。


3年前、突然の死になにか言い残したことがあるに違いないと私は思った。


『美鈴、俺の魂はまだこの世を彷徨っている。』


───……え?


直哉の口から、予想もしてなかった言葉が紡がれた……

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