遠い記憶
「…で、彼は誰なの?」
中野くんは言いづらそうに訊いてきた。
私が一方的に訊いてしまって彼の質問に答えてなかったことに気づいた。
中野くんにはちゃんと言った方がいい。
なぜか私の心がそう言っていた。
「……直哉は私の元彼。」
私の言葉に中野くんは驚いた顔をした。
「……別れたの?」
中野くんの言葉に小さく首を振った。
「……じゃあどうして?」
「……殺された。
私のストーカーに。」
この言葉を口にするだけで涙が溢れ出してしまいそうだった。
中野くんはしばらく何も言わなかった。
私たちは学校への道に無言で歩いていた。
先に口を開いたのは中野くんだった。
もうすぐ学校と言う時に。
「……辛いこと思い出させてごめんね。」
中野くんは私にこの話をさせたことを後悔してるようだった。
「……大丈夫だよ。」
私はそれだけ、中野くんに言った。
別に中野くんが悪いわけではない。
悪いのはストーカーだ。
「……でも、それと一緒にわかったことがある。」
中野くんは私の前に出ると、私の顔を見て話し始めた。