恋の破片
春さんの温もりに包まれてたら
なんだか、眠くなってきた。
部屋に戻ろうとしてから
もう、一時間は経ったかな。
さすがに待ちきれなくて
スルッと腕から抜け出した。
「春、帰ろう」
「ん…」
本に夢中で、曖昧な返事。
その時、私の足下に何かがコロコロと
転がってきた。
それは、広場のほうで遊んでいる子供の
サッカーボールだった。
拾い上げて、渡そうとしたけど
彼らとの距離は遠い。
「貸せ」
私の手からボールが逃げた。
いや、逃げたんじゃなくて
春が奪ったんだ。
「行くぞー」
遠くの子供たちに叫んだ。
ボールは綺麗な軌道を描き
正確に子供たちの元へ跳んでいった。
「うわぁ、マジすげー」
もちろん、彼がサッカー選手だとは
思うはずもなく。
ただ、圧倒されてワイワイ騒いでいた。
一方、春は
ちょっぴり嬉しそうな表情をしていた。