恋の破片





ご機嫌な春を連れて、公園を後にする。





春のアパートまでは、銀杏の並木道が
続いている。

寒いこの時期は、もう、さすがに
葉が落ちてしまっていた。






「ねぇ、春」

少し前を歩く春に問いかける。


「ん?」




春は、いつも私の半歩前を歩くんだ。

ゆるく手を繋いで、
半歩だけ前を歩いていく。





「大好き」

歩きながら、想いを告げる。



「どうした、急に」

ふふって微笑みながら
不思議そうな表情をしてる。



「ううん、なんでもない」

「ん、そう?」


春は、また、歩き出す。

私もその後ろをついて行く。








「好きだから、俺も」

前を向いたまま
春が、ぽつりと呟いた。



「うん」

思わず、顔がニヤけた。






春は、きっと分かってるんだ。


本当は、寂しくて、会いたくて
私がいつも泣いていること。

春は、言葉にして伝えてくれること
ってあんまりない。


春は、行動で示してくれるんだ。




でも、やっぱり、さっきみたいに
ちゃんと言葉にしてくれると

すごく嬉しい。





春の後ろ姿を眺めながら
私は、幸せいっぱいだった。





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