恋の破片
「あー、寒かったー」
ドアが閉まったのと同時に
春が叫んだ。
「やっぱり、春も寒かったんじゃん」
だから、早く帰ろうって言ってたのに…
私が、ぶつぶつと文句を言ってると
「でも、こうすればさ」
そこまで広くない玄関で
ぎゅっと抱きしめる、春。
「あったかいしょ?」
ね?って顔して、笑った。
その顔がカッコよすぎて
ぷいってして、腕から抜け出すと
春を残して部屋に向かった。
リビングのドアを開けると
冬独特の冷たさに包まれる。
「寒っ」
すぐにストーブのボタンを押す。
「なんで、逃げんの」
追いかけるように、春もリビングに
入って来た。
また、ぎゅっと抱きしめられる。
私も春の背中に、手をまわして
ぎゅっと力をいれてみる。