恋の破片
その腕の中は、すごく温かい。
ぎゅっと抱き合いながら
目の前の胸に顔を埋める。
春の匂いがする。
爽やかな柔軟剤の匂い。
やっと、部屋が暖まった頃。
「腹減った」
私を抱きしめたまま、春が言った。
「お昼、作るね」
甘いムードなのにそんなことを言い出すとは、やっぱり春らしい。
そんなことを考えながら、急いで
キッチンに向かう。
冷蔵庫を開けながら
んー、とメニューを考える。
「ねぇ、和食でいい?」
一応、確認と思って
リビングに目をやると
「なんでもいい」
眠そうな顔して
ソファーで寝っころがっている。
若干、イラってきたけど
そういうとこも春だから
って言い聞かせて料理を続ける。
「はい、出来た」
そんなには、時間のかからない
あっさりとしたご飯が完成。
「うまそうじゃん」
「でしょー」
やっぱり、好きな人に
褒めてもらえば嬉しいわけで。
おいしい、おいしいって
もぐもぐ、ばくばく食べる、春。
自然と顔から笑みがこぼれる。
満腹になったらしい、春は
また、ソファーに戻っていった。
その後ろ姿を見ながら
お皿を洗っていた、私も
また、違う意味で満腹になっていた。