恋の破片
真白の季節、
寒さも本格的になってきた頃。
今シーズンがやっと落ち着いたらしく
遠征先のイタリアから帰国したのは
つい先ほどのこと。
チームのスーツを着て
運転する姿も、やっぱりカッコいい。
数ヶ月ぶりの春を助手席から覗き見る。
瞳から伸びる長い睫毛。
スーッと通る鼻筋。
キレイな黒髪。
ハンドルを握ってない春の左手に
右手を重ねた。
「ん?」
嬉しそうな顔なんて
クールで不器用な春は、絶対しない。
「なんでもないよ」
だけど、私はふたりで同じ時間を過ごすってこと自体が愛しいんだよ。