恋の破片
車から降りると、冬風が吹いた。
玄関のドアが閉まると同時に
「結衣、ただいま」
ぽんぽんって頭を撫でる。
「おかえり」
負けじと、強く抱きしめた。
久しぶりの春を身体いっぱいに感じる。
「泣いた?」
「ううん」
春が帰ってくると必ず聞くこと。
「よくできました」
どんな小さなことでも
ちゃんと、言葉にしてくれる。
長旅と遠征の疲れで
春は、私を抱きしめたまま
ソファーに寝てしまった。
彼女が部屋にいるのに寝ちゃうって
やっぱり春らしいな。
甘いルックスと繊細なプレーは
どんな女の子もきっと、惹かれる。
でも、春はそういうことをあまり
いや、全く意識してない。
だから、どんな女の子にも
素っ気ない感じ。
飾らないっていうか、
素のあったかい笑顔。
私はそういう春が好き。