恋の破片

藍色






歩いて、少しの距離にあるスーパー。



冬の夜は思ったより、冷え込む。

思わず震えると繋がれた私の右手が、
スっと春のポケットに入れられた。



ちょっと背の高い
春の顔を見上げると、何食わぬ顔で


「さみぃー」

って歩いてく。











「春、何食べたい?」

「シチュー」

寒いし、ちょうどいいなと



「シチューね」

シチューの材料を揃えて
スーパーを後にした。








帰り道、また何食わぬ顔で
手をポケットに入れる春。



「なんか、甘くない?」

ちょっと、冗談っぽく聞いたのに


「そうかな」

春独特の柔らかい笑顔で見つめらて
ドキドキしてしまった。






やっぱり、なんか変。

今までになく、ふたりの雰囲気が甘い。
いや、春が甘い。



いつもと違う春に、私は隣で
ただドキドキしていた。






< 7 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop