恋の破片
藍色
歩いて、少しの距離にあるスーパー。
冬の夜は思ったより、冷え込む。
思わず震えると繋がれた私の右手が、
スっと春のポケットに入れられた。
ちょっと背の高い
春の顔を見上げると、何食わぬ顔で
「さみぃー」
って歩いてく。
「春、何食べたい?」
「シチュー」
寒いし、ちょうどいいなと
「シチューね」
シチューの材料を揃えて
スーパーを後にした。
帰り道、また何食わぬ顔で
手をポケットに入れる春。
「なんか、甘くない?」
ちょっと、冗談っぽく聞いたのに
「そうかな」
春独特の柔らかい笑顔で見つめらて
ドキドキしてしまった。
やっぱり、なんか変。
今までになく、ふたりの雰囲気が甘い。
いや、春が甘い。
いつもと違う春に、私は隣で
ただドキドキしていた。