スミダハイツ~隣人恋愛録~
良太郎は寝室を気にしながらも、ちゃぶ台に料理を並べた。
「肉じゃがと唐揚げです。出し巻き卵もありますので」
その時、寝室からポンッという音がした。
良太郎はびくりと肩を上げる。
きっと、ミサが炭酸飲料水のフタを開けた所為だろうが。
「何か今、変な音しなかったか?」
「さささ、さぁ? 近所の子供が外で空気砲でも撃ったんじゃないでしょうかねぇ?」
言った後で、ひどい誤魔化しだなと思った。
が、榊はケラケラと笑いながら、
「空気砲って、お前、おもしれぇこと言うなぁ」
良太郎はほっと安堵の息をつく。
缶ビールを手渡してやると、榊は目の色を変えてプルタブを開け、一気にそれを流し込んだ。
良太郎はちゃぶ台の前で正座をし、
「ご飯は雑穀米です」
「ふうん。さすがは料理人」
「豆腐の味噌汁もいかがでしょう」
「いや、ビールと味噌汁はなぁ」
「そ、そうですね。それで榊さんは麻子さんとはお付き合いされているんですか?」
「……は?」
途端に、榊の顔が怪訝なものになる。
良太郎は蒼白した。
「いや、その、えーっと……」
もごもご言っていたら、ポケットの中の携帯が震えた。
榊に見つからないようにそれを取り出し、メールを確認したら、ミサは【バヵ!】と送ってきた。
ミサの日本語の書き方について突っ込めるほどの余裕は、良太郎にはもうなかった。