スミダハイツ~隣人恋愛録~
ミサはメールで【良ちンのことぢャなくて榊の話を聞き出せ!】と送ってきた。


無理だ。

降参宣言をしたかったが、でもそれさえできるはずもない。



「僕は恋愛なんて、そんな。仕事が忙しいですし、何より出会いもありませんので」

「はぁ? この世の中の半分は女だぞ? 街を歩いてるだけで女が溢れてる。お前は出会おうとしてないからダメなだけで、その気になればどうにでもなることだろ」

「あ、……はい」


榊の話にどうにか戻したいところなのだが、どんどん違う方に行っている。

おまけに榊は、説教モードに入ったのか、



「お前、そんなんでこの先どうすんだよ。26だろ? まさか童貞とかじゃねぇよなぁ?」

「いや、あの」

「え、マジで? マジで童貞?!」

「いえ、ですから」

「じゃあ、風俗は? それも経験ねぇの?」


なんて破廉恥なことを言うんだ。

ミサに聞かれているかと思うと、良太郎は茹でダコのように赤面した。



「ぼぼぼ、僕だって女性と関係を持ったことくらいあります!」


焦って叫んだ後で、またしても自分が言った言葉に恥ずかしくなった。

穴があったら入りたいとはこのことだ。


ミサはメールで【ゥケるー!】と送ってきた。


女性経験があるだなんて、その場しのぎの口から出まかせで、つまりは嘘なのだから、良太郎は半泣きになった。

が、榊はそれでこらえてはくれない。



「マジか。意外だなぁ。いつ? 相手はどんな子だった? 芸能人で言うと誰系?」


矢継ぎ早に質問をぶつけてくる榊。

良太郎は消え入りそうな声で、「専門学校の時に一度だけ」と、これまた嘘を、ぼそぼそ言った。


しかし、それは逆に榊の好奇心に火をつけたらしく、



「何? 『一度だけ』ってのは、付き合ったのがそいつだけって意味? それとも、ヤッたのが一回だけって意味?」
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