スミダハイツ~隣人恋愛録~


二階の202号室を訪ねる榊の声や足音を聞きながら、良太郎は脱力した。


とてつもなく長い時間を過ごした気がする。

もう二度とこんな役回りは御免だ。



「ミサさん。もう出てきていいですよ」


寝室に向かって声を掛けた。

が、ミサの返事はない。


良太郎は首をかしげ、「ミサさーん?」と、もう一度呼びながら、寝室を確認するためにドアを開けた。



「あ……」


ミサは真っ暗な寝室のベッドで、寝息を立てていた。


そういえば、【ゥケるー!】というメールを送ってきて以来、榊が帰ることになっても特に何もなかったなとは思ったが。

しかし、この短時間で、そんな、馬鹿な。



「ミサさん。嘘でしょう?」

「んー……」


ミサは難しそうな顔でうなるだけ。

どうやら本当に眠ってしまったらしい。


良太郎にだけ働かせておいて、指示をすると言いながらテレビを観た視聴者の感想のようなメールしか送って来ず、おまけに寝落ちするなんて、とんでもない人だ。


良太郎は、ミサを揺すり起こして文句を言ってやろうと奮起した。

が、寝返ったミサのはだけた胸元を見てしまい、良太郎は驚いて思わず身を引いた。



「ちょ、ちょちょちょ……」


ミサはいつも露出狂のような恰好をしているため、良太郎も見慣れているつもりだった。

だから今まで、目のやり場に困ると思ったことはあっても、それを変な目で見たりしたことはない。


のだが、無防備に眠っているミサが急に可愛く思えてきて、おまけにそれが自分のベッドであるということも加味されて、良太郎の心臓は爆発してしまいそうだ。
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