スミダハイツ~隣人恋愛録~
思い出したらダメだ。
そう自分を制しているはずなのに、あの日以来、良太郎はミサの寝ている姿が、どうやっても目に浮かんでしまっていた。
その度に、性的な欲求で発狂しそうになった。
あれから一週間。
良太郎は夜も眠れないほどになり、このままだと死んでしまうと思ったため、藁にもすがる思いで201号室のチャイムを押した。
「おー、102か。この前はどうもな。で、何だ? また飯の誘いか?」
榊は無邪気に「酒あるか?」などと聞いてくるが、
「いえ、そうではなくて。実は榊さんに、ご相談したいことがありまして」
「うん?」
「思い出す度に淫乱な想像が頭の中を駆け巡って妄想が止まらないんです」
自分の言葉に自分で赤面する。
榊はきょとんとした。
が、次には精悍な顔を引き攣らせ、
「困るよ。いや、102の気持ちは嬉しいけど、俺はそんな、男は恋愛対象じゃないし。ましてや、お前とセックスなんて」
何の話だ。
と、思ったが、良太郎は焦っていたため、主語を言い忘れたことに、今更気付いた。
「違いますよ。どうして僕が榊さんとそんな関係にならなきゃいけないんですか」
「そっか。まぁ、そうだよな」
榊も納得し、「とりあえず上がれよ」と、良太郎を室内へと促した。
榊の部屋は、工作をする子供の部屋みたいに、服の基本となるらしい型紙が散らかっていた。
いつ見てもアトリエみたいだと思う。
榊は型紙を隅に寄せ、ふたり分の座るスペースを無理やり作った。
正座して座る良太郎に麦茶を出してくれる榊。
良太郎はカラカラに渇いた喉に、それを一気に流し込んで、
「僕はミサさんを性的な目で見てしまう下劣で最低な人間です」