スミダハイツ~隣人恋愛録~
吐き捨てるように言った榊の言葉が突き刺さる。


確かに榊の言葉は一般的に聞いても正しいのだろうとは思う。

が、良太郎は26年間も『それ』を恥だと思って生きてきたため、そう簡単に割り切れるはずもない。



榊は口をへの字に曲げた良太郎を見やり、ため息を吐いて、



「とにかく、ギャル子がどうとかいう話は置いといて、お前は女を知らなすぎるのが問題だと思うんだけど。試しにその辺の女を口説くところから始めてみろよ」

「そんな、榊さんじゃないんだから」

「いや、免疫をつけるのは大事なことだ。お前、ギャル子とは普通に話せるだろ? だったら、問題はないさ」


滅茶苦茶だ。

良太郎にとってみれば、それは、母親が料理をするのを見ているだけだった子供に、いきなりフランス料理を作ってみろと言うレベルの話なのだから。


良太郎は力なく、「無理ですよ」と、かぶりを振った。



榊はそれに対して舌打ちする。



「無理、できない、ありえない。だったらわざわざ相談に来るな、馬鹿」


毒づかれ、良太郎は返す言葉もなくなった。


榊の台詞はもっともだ。

どうにかしたいから榊を訪ねたのに、なのにすべてを受け入れられず、及び腰になっているのだから、榊が怒るのも当然だろう。



「すいません。努力します」


良太郎は蚊の鳴くような声で言った。

榊は肩をすくめて見せ、



「他の女を見たらわかるよ。そいつとヤリたいって思ったら、誰でもいいってことだし、逆に、やっぱりダメだと思ったら、お前はギャル子じゃなきゃ、ってことじゃん?」

「はい」


榊が言うなら、そうなのだろう。

良太郎は素直にうなづく。



「しっかし、102がギャル子に、ってのは、意外すぎたけど。でもまぁ、あんま難しく考える必要ねぇと思うぞ。『好き』っていう言葉の裏は、わりと黒いもんだから」
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