秋から冬への物語
始まりの日
春ってのは、どうも苦手だ。

今日だって、むせかえるような桜の香りの中をくぐってここまで来た。

寒くもないが暑いともいえない…一言で言えば、生ぬるい。
そんな中途半端な気候も気持ちが悪い。


「……」


窓の外にボンヤリ目をやりながらふゎ、とあくびをする。


何となくそわそわして、落ち着かない空気。
相手の様子を伺うような、探り探りの会話も。


新しい環境に身をおかれる年は、特にこの季節が憂鬱になる。


そう、今年みたいに。
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