秋から冬への物語
ところが
中学校に上がった途端、俺たちは試合で勝てなくなった。
小学生の頃とはレベルの違う投手の球に、先輩含め打線は苦戦した。
県大会出場も危ぶまれるほどだった。
──俺は打たれない。
でも点が取れなければ、勝ちは無いのだ。
三年生に上がるとすぐに、各高校のスカウトがひっきりなしに俺のもとへやってきた。
野球雑誌や新聞の取材もかなりの数をこなしてきた。
俺たちの学校は、いつしか『槙のワンマンチーム』なんて呼ばれるようになってしまった。
その事でチームのモチベーションも下がり
野球に嫌気がさして、部を辞めてしまう奴もいた。
だんだん、チームが噛み合わなくなって
呼吸が合わなくなっていく。
そして
あの夏が やってきた。
「ふははっ」