秋から冬への物語
「槙」
のそのそと帰り支度をしていると、後ろから突然肩を叩かれた。
「…って、四中野球部のエースだった槙だろ?」
後ろを振り返ると、坊主頭に逞しい体つき。
いかにも、って感じだな。
「…そうだけど」
「やっぱり!」
おそらく野球小僧のその男子は、俺の返事にぱぁっと笑顔になった。
日焼けした顔に、白い歯が映える。
「自己紹介の時、絶対そうだと思ったんだ!あ、俺二中でショートやってた宮間なんだけど覚えてない?何回か戦ったことあるんだぜ」
「あー…あぁ、」
記憶の糸を必死に手繰り寄せる。
「何となく」
「マジで?」
…とは言ってみたものの。
目の前で興奮気味に話す彼が、記憶の片隅に残る男と果たして同一人物かどうか。