秋から冬への物語
──だから何だという話ではあるが
確かに、俺はこの辺では多少名の知れた選手だった。
小学二年生から野球を始め、すぐにピッチャーになった。
体力も精神力も一番消耗するけれど、自分がいなきゃ試合が始まらない。
それは俺にとっての誇りで、高みを目指して努力を続けた。
小学五年、六年生と二年連続でチームが全国大会出場を決めた。
エースは俺。
親も友だちも近所の人たちも、皆が喜んで応援してくれた。
新聞に俺のインタビューが載ったりもした。
厳しい練習に耐え仲間と一緒に勝ち進んでいく喜びは、何物にも換えがたいものだった。
野球が好きだと、心の底から思えた。
中学校も全国の強豪からたくさん入学の誘いを受けたが、リトルの仲間とそのまま野球がしたかった俺は地元の中学校に入学した。
入部してすぐに背番号1を受け取った。
『星河リトルの槙』から『四中の槙』へ。
先輩とぶつかったりする奴もいたけど
何だかんだ言ってもみんな野球が好きだったので、部を辞める事なんて考えられなかった。